top of page
JOURNAL
静寂の誓い
静寂の誓い
2023年11月24日
「ふたりが、誓いの手紙、読めないかもって言うてて!どうしよー!」
Ace Hotel Kyotoでの結婚式のリハのために前日入りした私に
プランナーの一色 浴果里さんが真っ先に伝えてくれた、一大事笑
基本的に前日入りでのリハというものは
私は参加できないことがほとんどなのですが
(お客様の金銭的負担が大きくなってしまうため)
この結婚式は結構いろいろと大掛かりなものだったので
前日入りした次第でございました。
☝︎この写真は、多分その知らせを受けたときのですね。
久々に一緒に結婚式を創れるわくわくと、もう夜なのと、
「ふたりが誓いの手紙を読み上げられないかも」
という衝撃的事実の知らせによって
テンションがちょっとおかしくなってる時。
まじどうしましょー!!
って一旦笑いましたけど、その後しばらく
クリエイター陣で頭を抱える時間が到来するのです。
どの結婚式においても、
「誓いの言葉」というものはやはりとても大事なもので
誰かが作った言葉を借りて誓うのではなく
過去・現在・未来を生きる、
” 等身大の、自分だけが持っている言葉 " で
誓ってほしいと願っています。
ふたりの場合は、相手への手紙をゲストの前で読み上げて誓う予定でした。
でも、どうやら読めない気がすると言っているらしい。
読めない理由はきっといくつかあるのだと思うし
とっても頭がいいし、仕事人間なふたりだから
「読む」って決まったらきっと読むんだけど
それはきっと
「オフィシャルな自分のままで読む」
ことになるだろうなと
我々クリエイター達は全員一致の解釈をしたので
「"読まないけど誓う" を実現させるには?」
をお題に、実験しながら考えていくことになりました。
☝︎このときもきっと、アイディアを出している
ふたりの誓いを意味あるものにするために
譲れないこと、守りたいことは、みんな同じでした。
・読み上げなくてもいいけど、絶対に誓ってほしい
・誓う姿はゲスト全員に見守ってほしい
「じゃあ、誓いの手紙をみんなの前で黙読しよう」
と結論づけるも、
「みんなに見られながら手紙を読んでも集中できないよね」
「ゲストも、ふたりが手紙を読む姿をじっと見てる時間ってハードル高いよね」
と、さらなる課題が出現。
しばし頭を悩ませたのち
「視線が気になって集中できないなら
顔が見えないくらいの真っ暗闇の中で黙読するってのはどう?」
ということになりました。
一般的に考えて、
「新郎新婦の顔が見えない挙式」
って、まずないですし
それ以上に、最も重要な「誓いの言葉」のシーンにおいて
「何を誓うのか」が誰にもわからず
どんな表情で誓うのかも誰にもわからない
…なんてことは、おそらく前代未聞なのです。
もし自分が列席する側だったら、知りたいじゃないですか。
ふたりが何を越えてきて、何を約束するのかって。
だって、我々はそれに対して「承認」して「祝福」するのだから。
そこがわからないままに、承認してもらうのは
本当に本当にハードルが高いことなのです。
でも、多分これしかない。
きっとふたりのゲストなら、受け止めてくれる。
何かを感じ取ってくれるはず。
そう信じて、構成や導入、音楽や照明、司会の言葉やニュアンス、
その場で動く人間の所作の一つ一つを
何度も実験しながら、やっと正解を見つけました。
これでふたりは安心して誓いの手紙に集中できる!!
よかった!本当によかった!
思わずSOUND CoUTUREのハルさんとHUG。
この夜の達成感と、安堵感はとても大きかった。
「素敵な演出を作ること」が目的ではなく
あくまでも
「ふたりが集中して誓えること」
「ゲストが心の底からふたりの誓いに向き合い見守れること」
これを突き詰めて突き詰めて
その結果として作り上げた空間と演出。
いろんな仕掛けを入れ込み
相互に影響しあう構成を組み立ててのものなので
「暗闇で手紙を読む」
という突飛な部分だけを扱っても絶対にうまくいかない。
誰にでも提案できるスタイルではない。
でも、これから誓う人たちみんなに提案したいくらい
美しくて素晴らしい形になり
崇高で意味深い時間を創れる自信を持って
翌日を迎えました。
・
・
・
空間にいる誰の顔も見えない暗闇の中で
相手から受け取った誓いの手紙を、手元の灯りだけを頼りに読む。
誰のことも気にしないでいい。
手のひらの中にある、その手紙だけが見えている。
世界の全ての静寂がそこにあるかのように
相手の言葉だけが届いてくる。
この場にいる全ての人が
人生最大のラブレターを受け取ったふたりの気配だけを感じて
ただじっと待つ。
どんな言葉で未来を誓ったのかは知り得ない。
知らなくても承認できる。祝福できる。
気配だけで、誓いが刺さるように伝わってくる。
・
何を言われても、自分の道を歩くだけ
真実は自分しか知らない
結局はひとりぼっちなのか
そう思って歩いてきた先で振り返ってみたら
見えていなかっただけで
そばにいて、共に歩んでくれていた人が
こんなにも大勢いたことに気がついた。
この空間のように
見えなくても、ずっといてくれた。
ああ、孤独じゃなかった。
こんなにも満たされていた。
人生全てを味わい尽くして、いつか永い眠りにつくときに
この景色を思い出してくれることを願って。
大切な人の前で。
bottom of page